このブログでは、長々と「あなたがUbuntuを使う100の理由」を書き綴ってきたのですが、その目的は、まだまだ日本では知名度が低いUbuntuをできるだけ多くの人に知ってもらうことでした。数ヶ月の連載中にUbuntuの名前は徐々にひろまってきましたし、1つのテーマとしてのネタも尽きました。表題の「100」にも達したことですし、連載はこれにて終了します。ブログそのものは、テーマを変えてもうしばらく続けようと考えています。
さて、このシリーズの目的は、上記のように広報にあったわけですが、広報のためには情報の取捨選択を行います。そのため、目立つこと、話題になりやすいことを集中的に取り上げ、必ずしも全ての情報を同じような公平さで扱うことがありませんでした。嘘は書かなかったつもりですが(事実と違うことがあれば、それは私自身が誤解しているためです)、「いいこと」ばかり書いたので、読者の方々には現実とは異なったイメージが伝わった可能性もあります。そこで、今回は、「じゃあ、現実にはUbuntuはどのように受け入れられているの?」ということを、私の知る範囲で書いてみたいと思います。
●どのくらいの人々がUbuntuを使っているの?
まず最初にお断りしておかねばならないのは、世界中にどのくらいのUbuntuユーザーがいるのかということをいくらかでも正確に把握する統計は存在し得ないということです。私のようにUbuntu以外の環境を全く使わないユーザーの他に、限られた用途や場所で(例えば自宅でネットを見るときだけ)Ubuntuを使うユーザーもいるでしょうし、インストールはしたものの使わないユーザー、ライブCDで立ち上げたことがあるという程度のユーザーまで、使用の程度は様々です。どこまでをUbuntuユーザーとするのかで話は変わってきます。サーバーとしての使用を含めるのかどうかによっても数は変わります。どの程度の頻度でパソコンを使い、どの程度重要な目的に使うのかによって、統計の現れ方は変わってきます。
さて、全世界でどの程度の人々がUbuntuのようなデスクトップLinuxを使っているのかということを推測するひとつの数字は、Webアクセスの解析結果からもたらされます。自動巡回装置などによるアクセスを除いた多数のWebサイトへのアクセス結果を見れば、ネットに接続されているパソコンがどんなOSで稼働しているのかを推計できるというわけです。そのような数字のひとつとして、Linuxが0.81%という統計があります。90%以上を占めるWindows系OSと比べればもちろん、急速に回復中のMac
これはどのくらいの数になるのでしょう。全世界のネット人口はざっと7億近くとも推計されますが、これには携帯ユーザーなども入っています。世界のパソコンの台数は6億台以上ともいわれますが、どの程度の機械がどの程度稼働しているのか、実態は不明です。仮に世界に5億台のパソコンがあるとして、その1000台に2台の割合でUbuntuユーザーがいると仮定すれば、世界には100万人のUbuntuユーザーがいることになります。日本では、Ubuntuは人気を集めるようになってきているとはいえ、英語圏に比べればまだまだですから、そのうちのわずかしか占めないでしょう。1万人とか2万人とか、そういった桁ではないかと推定されます。これは、Ubuntuの英語フォーラムの登録者数が418,625人、日本語フォーラムの登録者数が1748人であることともある程度符合します。
結論として、世界中では100万人程度、日本国内では1万人程度の桁で、しかも相当な幅での誤差が予想されるというところではないでしょうか。
●Ubuntuは本当に普及しつつあるの?
ダウンロード数だけでいえばリリースごとに着実に増加しているようではありますが、これはあてになりません。「ライブCDで試してみただけ」とか、「ダウンロードに失敗して何度もトライした」というようなケースが数を増加させ、いっぽう、「自分のパソコンにインストールした後のCDを友達にあげたよ」とか、ネットワークインストールのケース、さらに派生ディストリビューションなど公式サイト以外からのダウンロード数がカウントされないからです。
普及しつつあることのひとつの根拠は、「人気」です。OSの人気投票を行えば、UbuntuはMac、Winに次いで相当な数字を集めるようになりました。Googleの検索数は、一定して増加を続けています。ブログ検索をかけると、毎日多数のエントリーがUbuntuについて触れるのを目にするようになってきました。火のないところに煙は立たない、人気があるということは普及を裏づけているのではないでしょうか。
もうひとつの根拠は、プリインストール機の発売です。日本では、まだ企業向け販売をある小さなメーカーが始めたばかりですが、欧米では既にDellがプリインストールモデルを4月から販売しており、イギリスでは先月にテスコ、アメリカでは今月にウォールマートという大衆向け量販店がそれぞれUbuntu(もしくは派生ディストリビューション)のプリインストール機を発売しました。こういったUbutnuマシンの販売数は直接Ubuntuユーザーの増加になるわけですから、普及にはずみをつけるものと考えて間違いないでしょう。
一方で、「Linuxブームは過去にもあったが、結局普及はしなかった」という冷静な分析も可能です。これに対する有効な答えはありません。今回もブームが終わればデスクトップLinuxなど誰も使っていないという状況になるのかもしれませんし、今度こそ本物になるのかもしれません。上げ潮の波が寄せては返しながらだんだんと高いところで止まるように、ブームが去っても着実にユーザーは増加しているのかもしれません。いや、ブームそのものがもう終わりかけなのか、まだこれからなのか、それさえもわかりません。正確な答えは、やがて歴史が教えてくれるのでしょう。
●Ubuntuは本当に使いやすいの?
本当です。少なくとも私にとっては。けれど、これはかなり限定的な条件つきでの話です。
まず、ハードウェアの相性の問題があります。本文記事で95%のパソコンが対応すると書きましたが、この数字はどうやらかなり過大に見積もられたもののようです。もちろんいろいろな技術によってそのぐらいの割合のパソコンでUbuntuを走らせることは可能だろうと思います。けれど、特別な知識のない人が行き当たりばったりのパソコンを、特に手を加えずにUbuntuで起動できるかどうか、その確率は5〜8割ぐらいではないかという気がします。統計をとったわけではないのですが、ブログ界の書き込みでの成功率から推計すると、だいたいそのあたりの気がします。
そして、Ubuntuで起動することに成功しても、全く問題なく全ての機能が使えるのはその数割の機械ではないかという感じです。つまり、起動からインストール、最終的な使用まで、全く問題なくスムーズに使えるのは全体のパソコンの1〜2割ぐらいしかないのではないかと思います。
残りのパソコンは、設定を変更したり追加インストールを行うといった比較的簡単な作業で完全に動作する場合、いくつかの機能が使えないのでちょっとの不便を堪え忍びさえすれば問題なく使える場合、きちんとした使用に比較的高度な知識を必要とする場合に三分されます。それぞれがどの程度の割合なのかは、推計する材料がありません。
ということで、もしもあなたに高度なIT知識がなければ、あなたのパソコンでUbuntuが使えるかどうかは運任せというのが偽らざる実状です。しかし、それでも私はUbuntuを勧めます。もしもうまく使えればラッキーだし、一部の機能が制限されていても、メリットはそれを補って余りあるからです。たとえば、私のノートパソコンはハイバネート(使用中の状態を保ったまま電源をオフにするスリープの一種)がうまくいきませんが、別にその機能が使えなくても使用に問題がないので、Ubuntuで使っています。
次に、Windows環境との小さな違いがあります。これは、気になる人にはずいぶんと「使いにくい」と感じられるでしょう。私はたまたまメイン環境がもともとMacだったので、Windowsよりはむしろ使い易く感じました。このあたりの感性は、個性とも絡んできますので一概に言えません。ですから、「Ubuntuは使い易い」というのは本当は正しくなく、「Ubuntuが使いやすいと感じる人もいる」というのが正しいのでしょう。
●Ubuntuは本当に優れているの?
他の場でも書きましたが、OSの優劣を論じるのは、さまざまな要因が絡んでくるため、無意味な場合が多いものです。「自分にとってこれが適している」という条件が、他の人に当てはまるとは限らないからです。
また、パソコンを取り巻く環境は日々変わります。たとえば、少し前までは「Ubuntuは動画を見るのに不便だ」という状況がありました。いまでは特定のソフトに依存する場合を除けば、Windows以上に簡単です。現在はUbuntuの方が圧倒的にウィルスが少ないというのは事実です。けれど、数年後にも同じかどうかは保証がありません。もしもLinuxのシェアがWindowsよりも増加し、Windowsのセキュリティが格段に向上すれば、Linuxのウィルスが増えるという事態が発生しないとはいいきれません。
ですから、「Ubuntuの方がWindowsよりも優れている」と、無条件に言ってしまうのは正確ではありません。あくまで私の感覚として、Webにメール、ワープロに表計算、写真の整理に音楽鑑賞といった程度のユーザーなら、きっとUbuntuの方がメリットが大きいだろうと思うといった程度です。
●最後に
このブログは、ある意味、「ブログとはこんなものだ」といった常識に対する挑戦でもあります。日本では、多くの人々が「ブログって、日記でしょ」というイメージをもっています。しかし、英語圏のブログを見ていると、日記ブログももちろん数多いのですが、きちんとテーマを決めてしっかり書き込まれたブログもいくらでもあることがわかります。そういったブログがあるからこそ、ブログのメディアとしての多様性も確保されているのだと思います。
このブログを展開しているのは、ニュースサイトの「読者ブログ」です。おそらく「読者ブログ」として期待されているものとは全く異なった傾向の内容になっているとは思うのですが、あえてそういった場の雰囲気のようなものを無視しました。枠組を越えていくことが新たな可能性を開くものだと思うからです。
Ubuntuをメインテーマにしたシリーズは終わりますが、今後も、ひとつにテーマを絞った別のシリーズとして、このブログをしばらく続けていこうと思います。
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2007/11/01 20:14
Commented by
珈琲好き さん
連載お疲れ様でした。凄く参考になりました。
目的を持ってブログを書き続ける事が出来る方を尊敬してしまいます。私のブログなんぞはストレス解消用の書きなぐりでしかないもので(笑)
新シリーズ楽しみにしています。(^^)
2007/11/02 17:11
Commented by
松本 さん
珈琲好きさん、コメントありがとうございます。ストレス解消用のブログにも、それなりの意味は十分にあると思います。私もそういうものをひとつ持っています。
いろんなパターンが存在できるというのが、ブログのメリットだと思うのですね。「ブログだからこうだ」という決めつけは、非常にもったいないと思っています。


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